北戸田駅の西口を出て左方向に3分ほど歩くと、グリーンに囲まれたカフェ「Gardener’s KITATODA」が目に入る。中には本格的な植栽グッズと、庭用のファーニチャーがズラリ。お店の中に貼られた説明書きを見ると、どうやらここは「庭の専門家が運営するカフェ・雑貨・植栽販売のお店」だという。

東京でもグリーンの多いカフェはよく見かけるが、「庭×カフェ」というコンセプトは珍しい。このお店はどういう使い方をするのが正しいのだろう。店長の石本修梧さんに聞いてみた。

「このお店は、グリーンから植栽グッズ、さらに屋外に置く家具まで、庭づくりに必要なことは全て網羅しています。なので、まず緑に囲まれた空間でお茶をしながら庭の雰囲気を感じていただいた後に、今度はご自身の庭を植栽するのに必要なものをスタッフと一緒に探す、というのが一般的な使い方だと思います。また、暖かい時期には外の席も解放しているので、お家の庭でくつろいでいるような気持ちになれますよ」

戸田では、自宅でガーデニングを楽しむ人も少なくないという。植栽は専門的な知識が必要とされるので、近隣の人たちにとってはここが駆け込み寺になっているのだ。石本さんも自宅の庭でガーデニングのトライ&エラーを繰り返し、都度お客さんにフィードバックしているとのこと。

ここで、石本さん本人のバックグラウンドについても掘ってみよう。地元は和歌山。しっかりした体格だったので、まずはスポーツ歴を聞いてみることに。すると、想像よりも“本気”なキャリアの持ち主だった。

「小学校から大学までサッカーをやっていました。自分で言うのもなんですが、運動神経は良く、足も早かった。中学は、地元ではサッカーの名門として知られる明和町立明和中学校に入学。あと実は、同時に友人からの誘いで空手もやっていまして。だから、放課後から7時まではサッカー、そこから空手の稽古に向かう、というハードな毎日を送っていました。」

小学生の頃にはプロを目指したこともあった。だが、中学に入って自分よりもはるかに才能のある選手たちを目の当たりにして、自分の中でプロの夢はどんどん遠いものになっていった。だが、スポーツは大好きだったので、高校でもサッカーは続行。

野球以外の球技はだいたいこなせるスポーツマン。

「そこは特に強豪というわけでもなく、文武両道をうたっていました。でも、僕は勉強よりもとにかく遊びたかった(笑)。バイクにハマったりして、かなりやんちゃだったと思います。あと、サッカーだけの人になりたくないな、とは考えていました。もっと色んな知識を持った人になりたいと。そこは冷静だったかもしれません。」

大学でもサッカーを続けながら、それ以上の熱量で遊びに興じた。石本さんは元来フットワークが軽く、誘いを断らないタイプ。色んな場所に顔を出し、大人たちに躊躇なく声をかける。その中には自分で事業を手がけている人も多く、知識の幅や人間力に大きな影響を受けた。みんな楽しそうな人生を生きていたので、素直にそれに憧れたのだ。ただ、将来のことは特に何も考えていなかった。

「でも僕の場合、特にやりたいことがないかわりに、“やりたくないこと”もなかった。で、とりあえず専門的な知識をつけようと思って、いろんな専門学校が集まる合同説明会に行ったら、その隣で今の会社(株式会社タカショー)が説明会を開いていて。そこで、『あれ、君会ったことあるよね?』とたまたま面識があった人事担当者に声をかけられて、一気に話が盛り上がり、面接を受けさせてもらうことになりました。」

ガーデニング用品を販売するタカショーがちょうど飲食部門を立ち上げようとしていた矢先、レストランでのアルバイト経験が豊富だった石本さんは、正に適任だった。入社後は持ち前の積極性を生かして食とガーデニングの知識を身につけ、現在では店舗運営を完全に任されている。今は「植物を買うならガーデナーズ」という印象をより多くの人に持ってもらうために、日々店頭で奮闘中。現在、新しい店舗を出すことも計画しているという。

「木1本で庭の雰囲気はガラッと変わります。ここでは、まずお客さんがどんな庭をイメージしているかがわかればーーそれは例えば『アメリカっぽい雰囲気!』とかざっくりしたものでもいいんですがーーそこに近づけていくためのノウハウを直接伝えられる。そして、実際に植栽のために必要な道具や植物も手に入ります。庭づくりに少しでも興味がわいたら、ぜひ足を運んでいただきたいですね。」

ランチメニューの「特製ハッシュドソースハンバーグ」はスープとパン、サラダがついて1,180円。

さらに、緑だけではなく、食事も本格的な「Gardener’s KITATODA」。ランチで大人気だというハンバーグは、石本さん自らレシピを考案。氷見牛100パーセントで作られたハンバーグは、肉本来の甘みが際立つ。

戸田エリアで家を建てた際には、間違いなくお世話になる新しいコンセプトのカフェ。また、たとえ庭付きの家を持っていなくとも、ここでは室内用の観葉植物やベランダでのハーブ菜園の装飾も可能。ふだんの生活を緑で彩りたいと思ったら、ぜひ足を運んでみてほしい。