北戸田駅から美女木方面に歩いてみる。短い橋を渡り、幹線道路の下を抜けて、JAの施設や物流センターが立ち並ぶ通りをしばらく進むと、これぞ郊外というような大きな倉庫が見えてくる。入り口そばにたどり着くと、バックストリート・ボーイズやエアロスミスのなど往年の洋楽ヒット曲が漏れ聞こえてきて、中でいったい何が行われているのかと覗いてみたら、全身防具に包まれた人々が熱心にスティックでパックを打ち合っていた。そんな「MiSC」をフォトグラファー・湯浅亨の写真とともに、覗いてみよう。





日本では珍しく、室内で行うインラインホッケーの設備を備えたこの「MiSC」。運営する髙山智宏さんは、生まれ育った秋葉原の駅前広場で自然とインラインホッケーをプレイするようになったそうだ。

日本国内におけるインラインホッケーの競技人口は1万人ほど。子どもの頃から真面目に練習していた髙山さんはあっという間に日本でトップレベルの選手になり、大学在学中にプロリーグがあるアメリカへ飛んだ。そこは、地域の公園にもホッケーリンクがあるような環境で、誰もが自然にホッケーに慣れ親しんでいたという。日本ではインラインホッケーを始めるにはまず高価な防具を揃えないといけないと思いこんでいる人が多いが、アメリカ人はかなりラフな格好でプレイしている人が少なくない。敷居が低いのだ。

帰国後、髙山さんは現在の会社「ネクストワンスポーツプロダクト」に所属。本業はホッケー用品の委託販売だが、ほどなくして彼は「MiSC」の運営を任されることになり、そちらが忙しくなって選手は引退した。彼は今、より俯瞰的なところからインラインホッケーの現状を分析し、その魅力を広めるために尽力している。ちなみに、ここは観戦席も幕も着替え室もすべて自分たちの手で作り上げたという。





「MiSC」は年に2シーズンのインラインホッケー大会も主催。トーナメントはいくつかのクラスに分かれていて、「プロ級」から「40代から始めた初心者」まで様々なバックボーンを持ったプレイヤーが参加している。中には4〜5チームに所属する猛者も。下の写真に写っている15番のゼッケンをつけた増渕功樹さんは、10代にして将来を嘱望されているトップ選手で、近々アメリカ留学も決定している。

なお、関東圏でインラインホッケーがプレイできるのはここだけ。また、フットサルやバスケ、テニス、最近ではドローンの練習に同施設が使用されることもあるという。ローカルから生み出されるスポーツの多様性にスポットライトを。観戦だけでもウェルカムなので、スポーツ好きはぜひ訪れてみてほしい。