板橋清掃工場から出る余熱を利用している本館では、マングローブ林などの潮間帯植生、熱帯低地林、集落景観、雲霧林の4つの植生ゾーンを、さらに地階部分にはミニ水族館を備える。海底から高山帯へと続く、一連の熱帯環境を立体的に体感することができるスポットだ。今回は、雑誌広告などでも活躍するフォトグラファー・下屋敷和文の写真とともに、この魅力的な空間を覗いてみよう。
中に入ると、その巨大な空間に対する植物たちの密度に驚く。聞くと、約3000m²ある施設面積のうち、植栽面積は1000m²もあるという。絡み合い、妖しく伸びる木々の間を注視すると、熱帯に生きる多種多様な花々があることに気づく。
赤と黄緑の花びらと、その不思議な形状で目を引く「ヘリコニア・ロストラータ」。アルゼンチンやペルーの熱帯雨林に分布し、高さは3メートルほどで、花序は約30センチほど。熱帯植物はフォトジェニックなものが多く、若い男女がお気に入りを探しながら歩く姿も見られた。
雲霧林エリアの中でひときわ目立つ、むらさきの蕾。ぶどうのような形状をしたこの植物は「メディニラ・スペキオサ」。英名は「Showy Asian Grapes」で「綺麗なアジアのブドウ」の意、「スペキオサ」はラテン語で「美しい」。近くで見ればその複雑な構造に、思わず足を止めてしまうことだろう。
有名な食虫植物なので、見覚えがある人もいるのでは? この「ウツボカズラ」は代表的な食中植物の一種で、ポケットモンスターのキャラクター「ウツボット」のモデルになったことでその名が広まり、家庭で育てる人も増えたという。
地階部分のミニ水族館では、東南アジアを中心とした海水・汽水・淡水の魚から、エイやクラゲまで見ることができる。餌やりの様子を飼育員の解説つきで学ぶ「水族館のごはんのじかん(15:00からの約30分間/毎週土曜日※祝日を除く)も人気なんだとか。
他にも、難解な生態系を楽しく学べる館内のガイドツアーや、図書コーナー、喫茶店があるところも、地域の家族づれにとっては嬉しいポイントだ。「こんな場所が近くにあったら」が、浮間舟渡にはある。