おしゃべりがその場でイラストになると、人々は笑いはじめた
小屋の前にはローテーブルとベンチが設置されていて、コーヒーを手に取った人がそこに腰掛けていく。テーブルの上には持ち寄られた手作りのケーキや、からあげなどが並ぶ。
「え、これいただいていいんですか」
「じゃあ、ちょっと一口…。あ、おいしい」
「っていうか、ここっていったいなんなんですか。公園になるの?」
この場所の説明をすると、集まった人の口から「それならこんなことやりたい」「これもできるんじゃない?」とアイディアがこぼれる。野外演劇祭、青空カラオケ、ビーチをつくるべき、ドッグランはどうか、ウクレレのワークショップ、むしろとりあえずそれを話すためにバーベキューね。
途切れることのないアイディアたちは、リアルタイムで小屋の側面に設えられたホワイトボードにイラスト化されていく。
あはは、これ私だ似てる。カラオケのマイク、そのタイプのやつね。あたしね、アイドルになりたい!じゃあそれも書いておこう。子どもも交えたカジュアルな未来計画。その会話がイラストを呼び、そしてイラストが会話を再び呼ぶ。表情はどんどんほどけてゆく。
公園というと子どもの遊び場のイメージが強いが、大人もかなり楽しそうだ。休日の昼間に交わされる普段会わない人とのおしゃべりは、人を子どもにさせるのかもしれない。
そしてやはり、子どもたちの楽園へ
午後を過ぎても賑わいはさめなかった。近くのスポーツセンターへ向かう人が立ち寄り、また小話をして帰っていく。そうだピザ頼んじゃおう、という誰かの一声でオーダーされたピザは、届くやいなや瞬時に「一切れ300円以上」という札がつくられ、ドネーション形式でテーブルに置かれた。
近くの学童の子どもたちが突然現れ、ピザと蒸したさつまいもを両手にはしゃいでいる。子どもたちが増えてきた。そう思って小屋を振り返ると、さっきまで「どんな野外演劇祭がいいか」と話し合っていたその場所で「おいしいコーヒーはいかがですか〜」と女の子がコーヒーショップの店員を演じている。
もう、すでに色んなことが動きはじめている。
広大な敷地は、そのまま子どもたちの遊び場になった。瞬時につくられたルールで彼らがオリジナルなおにごっこで遊ぶ時、大人もピザの配布方法を工夫した。楽しく走り回る彼らの愛らしい声と姿をにこやかに見守る視線は、ただ愛でるだけでなく彼らのケガも防いでくれた。
今回「公園」に用意されたのは、遊具でもなければ、砂場でもない。
そこにあったのは、小屋とベンチとコーヒーだけだ。
「公園」にとってもっとも大切な要素が人だということを、なぜかぼくたちは忘れてしまっていたのかもしれない。
逆に言えば、小屋とベンチとコーヒーというアイテムは、どれも人と人を結びつけるものだった。
帰り際。くたくたになるまで遊んだ子どもたちが「次はこれいつやるの。ずっとあればいいのに」と話しかけてくる。
みんなでつくる未来の公園への第一歩は、こうして、ある晴れた土曜日に踏み出された。
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