他にはない「自分らしさ」を探して

 

——持永さんは学生の頃からずっと埼玉で育ったんですよね。どんな学生でしたか?

はい。今も埼玉に住んでますよ。高校の頃は大宮や池袋とかでよく遊んでいました。当時の私からすれば、渋谷は大都会。大宮と池袋には遊びに行けるけど、渋谷に行くのには勇気が要りましたね。街にいる人たちの種類が全く違うように思えたんです。

資格を取って就職する人が多い高校だったんですが、私は中学生の頃から芸能のお仕事をしたい、と思ってて「高校を卒業してからは芸能の世界を目指しながら働くんだろうな」と漠然と想像してました。それで、就職に有利なコースを選んでパソコンを使えるようになったり、簿記の資格を取ったりして、卒業してからはすぐにウェブ制作の仕事をし始めました。

——モデルとしての足がかりを掴んだのは?

高校生の時ですね。青山の美容室でヘアメイクしもらった帰り道に、別の方にモデルとしてスカウトされたんです。その撮影で原宿や渋谷に行くと、帰りにまたスカウトされて。このサイクルでどんどん仕事が増えていって、23歳くらいのときに、あるアパレルのサイトの専属モデルオーディションでグランプリを獲ったんです。

お話を聞いたのは、焼き鳥をメインにお値打ちなつまみが揃う「かさぎ屋」にて。賑やかだか一人でも入りやすい雰囲気だ。

——順調だったんですね。

その時は順調だったと思いますが、内心は複雑でした。周りには同じような夢を持った若くてスタイルの良い子たちがたくさんデビューしていく中、自分のセールスポイントが何なのか分からずにいて。「自分らしさ」をずっと探していましたね。

——そんな中、フリーランスになるわけですね。

フリーになってから3年ほど経ちますが、今いただいている種類のお仕事がずっとある保証はないから、常に先を読むというか、将来のことを考えています。将来はいつか来る「今」だから、準備しなきゃ後悔することになるなって。みんなが右に行くなら私は違う方へ、っていつも意識していますね。

「ビール党なので、最初から最後までビールを飲みます。切り替えるなら、グレープフルーツサワーとかレモンサワーが多いかな」

「一文無しになってもいいから、頑張ろう」

 

——そういった独自性への考えから、キックボクシングを始めたわけですね。今ではスポーツのイメージが強いですが、この頃からシフトし始めていた。

ちょうどキックボクシングを始めた頃、あるモデルの友達から、フルマラソンの大会の枠が1つ空いてるんだけど、って誘いがきたんです。実は彼女は私の人生のターニングポイントできっかけをくれたり、的確なアドバイスをしてくれる重要人物で。ホノルルでトライアスロンデビューすることになったのも、彼女が誘ってくれたからなんです。それ以来、キックボクシング以外にも色んなスポーツをやるようになって、お仕事も徐々にスポーツ寄りのものが増えていきました。

——同世代の仲間が今いる場所への追い風を送ってくれたんですね。

仲間の中でも、彼女は特別な存在ですね。実は20代の頃、色々な理由から一度就職しようと思ったことがあるんです。周りに相談すると、ほとんどの友達は「真実ちゃんが決めたなら応援するよ」って言ってくれたけど、彼女は「真実ちゃんできることまだいっぱいあるでしょ? (就職の道を選ぶのは)やれることを全部やりきってからにしたら?」って言ったんです。

私、心の底ではその言葉を待ってたんだと思います。この言葉に背中を押されて「一文無しになってもいいから頑張ろう」と思えた。それで、内定をもらっていたところをお断りして、自分にできることは何か? を必死に深掘りして、活動の方向性を考えました。スポーツを真剣に取り組み始めたのも、彼女の言葉で火がついたから。だからすごく感謝しているし、これからも何か大事なことはあの子に相談しようって思っています。

——では最後に。モデルとして、スポーツに携わる人として、これからどんなふうになりたいと思いますか?

いつまでもキックボクシングを続けることはできないので、早く教える側になりたいなと思っています。手に職じゃないけど、インストラクターになれば色んな場所で仕事をすることができますし。周りの子に聞くと、特にキックボクシングは「怖い」というイメージがあって、参加のハードルが高いんですね。そこをちょっと緩和できるような活動をしていきたいなって。

 

——具体的に言うと?

今のところは、ジム常駐のインストラクターになるというよりも、フリーのインストラクターとして各地でイベントを開催するほうがいいなと思ってます。気軽に参加する人を増やすことで「楽しかったから、家の近くのキックボクシングジムに通ってみようかな」みたいな感じで繋がっていって、キックボクシングがもっと身近なものになればいいなと。資格は取ったので、まずはクラスやイベントを開きたい。これからもスポーツを軸に、自分からおもしろいことを仕掛けていきたいですね。