手探りでスタートした養蜂

 

養蜂をスタートしたのは2008年。銀座で行われている「銀座ミツバチプロジェクト」を女性部で見学に行ったことがきっかけだった。自分たちでもやってみよう、という話が上がったが、当初は部員のほとんどが「怖いからイヤ」と難色を示していたという。

「私たち女性部は、これまでイベントの出店で焼きそばを焼くとか、花の種を配るとか、募金活動とか、あと結婚相談とかね、地域の交流を行ってきたんです」

部員の曽根慧子さん(左)と、部長の長谷川冨美子さん(右)。

普段は家業を支えたり、主婦として家を切り盛りしている女性たちが、突然養蜂に手を出すのはなかなかのチャレンジだった。であればと商工会も人を探し、養蜂の経験があった深井彊(つとむ)さんに声をかけた。養蜂家ではないが、過去にミツバチを飼っていた経験があり知識も豊富だった。

こうして女性部は、深井さんに教わりながら、商工会館の屋上で養蜂をスタートさせた。

「最初はなかなか採れなくてね。やっぱり近くに花が少ないから」

それでもなんとか採取した蜜を、内々で食べてみたら美味しかった。知り合いに渡すと「味が全然違う」という。

「市販のものは、純粋ハチミツといっても水飴が混じっているものもあるようなんですね。でも私たちのハチミツは、蜜だけをギュッと詰めているから、味が全然違うんです」

せっかくこんなに美味しいのだからと、戸田の人たちに食べてもらえるように、洋菓子店やパン屋にハチミツを提供するところから始めてみた。まずはハチミツ入りのパンやシフォンケーキを食べてもらって、その味を知ってもらう。これを4〜5年続けたという。

「人気も出てきたので、『TODA HONEY』として瓶詰めで売り出したんです。商工祭で出したら、1日であっという間に売れてしまって。昨年からはJR戸田公園駅構内にあるビーンズ戸田公園でも、養蜂の取り組みの紹介をしたり、ハチミツを使った限定商品を販売させてもらっています」

昨年の商工祭では50個用意した瓶詰めの「TODA HONEY」が1日で即完売になった。今では戸田が誇る名産品として市の優良推奨品にも指定されている。

 

次世代へ繋げたい

 

女性部では週に一度、ローテーションで屋上を訪れ、ハチの様子をチェックしている。台風が来るときは巣箱を屋内に退避させ、炎天下のときには日よけをする。巣箱の周りには、ハチの水飲み場を用意して、定期的に水を入れ替える。

「なんだかもうすっかり愛着が湧いてきてね。深谷市に『みつばちの碑』があって、養蜂家の方が供養のために年に1回、そこに集まるんです。私たちもみんなでお詣りに行くんですよ」

ハチが水で溺れないよう、麻を敷いている。

ハチへの思いはつのる。長谷川さんが見せてくれた手帳には、ハチが好む花の種類がびっしりとメモされていた。こうした花がもっと増えてほしい、と、市に要望を出しているという。なかなかこれだけの動きをする女性部も珍しいのではないか。

「埼玉県内に数ある女性部のなかでも戸田はすごい、と評価してもらってるんです。全国でも女性部の事業としてかなり優秀なんですよ」

長谷川さんのノート。花の種類がびっしり。

そう胸を張る長谷川さんは、戸田生まれの戸田育ち。女性部のほとんどが戸田生まれ、あるいは戸田に移り住んで長い人ばかりだ。皆、戸田愛は人一倍強い。養蜂への熱心な取り組みも、「戸田の女性部で頑張りたい」という思いがあってこそだろう。

ただ心配な点もある。後継者不足だ。

「会員のほとんどが高齢ですしね。人材募集はしているんですが、まず商工会の会員じゃないと女性部には入れないですし、なかなか。難しいですけど、地道に募集を続けるしかないですね」

自営業を営む家族の協力を得ながら養蜂に取り組んできた。商工会館に出かけようとすると、息子が「母さんは今日もまたブンブンか」と笑って送り出してくれるという。

左から新井智恵子さん、五十嵐栄さん、深井彊さん、前述の曽根さん、長谷川さん。

10月にはまた商工祭の季節がやってくる。大事に育てたミツを自分たちで巣箱から取り出し、熱で柔らかくする。瓶はひとつひとつ煮沸し、「TODA HONEY」のラベルもすべて自分たちの手で貼り付ける。ひとつひとつていねいに、ハチミツの縁が繋いでいくことを願って。

「自分たちの手でつくったハチミツだから、これからも繋げていきたいんです」。

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