Q.高橋さんは、何をしている人?

車両の定期検査を行っています。検査には様々な周期があり、最短では6日に1回検査が必要なものもあるんですが、私が担当しているのは90日以内の周期で1回の検査が必要なものです。そのほかに、急きょ発生した故障や不具合の修繕を行うこともあります。

埼京線の車両の場合、ひとりで1日約2両を点検します。ドアがきちんと開閉するか、屋根部分のパンタグラフが正常か、車輪に問題はないか……など、確認する箇所はとてもたくさんあります。

Q.JR東日本川越車両センターって何をするところ?

埼京線、そして川越線の定期検査を行うための車両基地です。電車は精密機械ですから、定期的に車両センターで整備を受ける必要があるんです。

壁面に書かれている「1:29:300」とは、アメリカのハーバート・ウィリアム・ハインリッヒが導き出した「ハインリッヒの法則」。1の重大事故の背後には、29件の軽事故があり、さらにその背後には300のヒヤリハットがある、という統計によるもの。

埼玉と栃木を管轄するJR大宮支社には川越のほかに、さいたま車両センター、小山車両センター、大宮総合車両センター、そして新幹線を整備する小山新幹線車両センターなどの車両点検施設があります。

川越ではE233系、209系、205系の整備を行うほか、試験車両のMUE-Trainや、車両センター内の入換に使用するクモヤ143も配備されています。

半地下のようになっている車庫内から、見上げるように車両の下部を点検する。

点検方法は様々。台車付近ではボルトを叩き、ボルトにゆるみがないか確認する。

Q.なぜこの職業に?

大学で機械工学について学んでいたので、それにまつわる仕事に就きたいという気持ちがありました。メカニズムを学んで、その視点から不具合の原因を探っていくのが好きなんだと思います。

鉄道マニアというほどではなかったんですけど、ずっと川越で育ったので、埼京線を身近に感じる環境にいました。希望通り、川越に配属されて嬉しかったですね。

あらゆるツールがきちんと整頓されている。

架線と接続する重要な部分「パンタグラフ」の整備風景。実際に屋根の上に登り、異常がないか丹念にチェックする。

Q.お仕事のやりがいは?

職場はベテランの方が多くいらっしゃいます。そういうと、「職人気質で気難しいのでは?」と思われがちですが、皆さんとても優しいんです。とにかく経験が豊富で、自分が知らない、すでに使わなくなった車両にも詳しい。わからないことは教えてくれるので、とても勉強になっています。

新しい技術に触れられるところも大きいですね。現在埼京線では、池袋〜大宮間で「ATACS(アタックス)」と呼ばれる保安設備の導入を進めているんです。これは、無線を使って列車の間隔制御を行う新しい列車制御システムで、埼京線が首都圏で初めて導入します。

Q.どんなところが大変?

車両はものすごい数の部品で構成されているので、まず「どこまでが異変で、どこまでが正常なのか」を見極めるのがとても難しいんです。点検中のちょっとしたネジの締め方によって、もとは動いていた箇所が動かなくなってしまうこともあります。
最後には班長が確認を行うので、最終的に問題はクリアできるのですが、まずはやはり自分で判断しなければいけないので、常に緊張感がありますね。

訓練で使用する、実際の部品を使ったモックアップ。ドアの上にあるリニアモーター式戸閉装置の点検整備を行う。

ほんの少しのネジの緩みがどういう影響を及ぼすか、実際に体験しながら覚えていく。

Q.職場までの通勤手段は?

朝は自宅から電車か自転車で通勤していますが、時間があれば走ってきますよ。

Q.走って?

マラソンが趣味なんです。大学の終わりに東京マラソンの出場枠に当選したのがきっかけでのめり込んでしまって。もともと野球をやっていたこともあって、身体を動かすのが好きだったんです。たまにランニングウェアを着て、家からトレーニング的に走ってくることもあります。小江戸川越ハーフマラソンには毎年出場していますよ。

Q.プライベートの夢は?

全都道府県のマラソン大会に出場するのが夢ですね。すでに各地のマラソン大会に参加していて、今年10月に山形、来年2月には大分の大会に参加する予定です。

よく「マラソンは孤独な戦い」と言いますけど、ペース配分とか、周りの人に接触しないようにとか、結構気を張り巡らすことが多いんですよ。もしかすると、異変に気づくという部分では、車両の点検と繋がるところがあるのかもしれないなと思います。整備はある意味全身運動なので、マラソンの体力づくりに役立っているという一面もあるのかもしれません。

Q.仕事における夢は?

海外で仕事をしてみたいです。今も数編成残っている205系ですが、その多くがインドネシアのジャカルタに送られて運転を続けているんですよ。しかもただ車両だけを送っておしまい、ではなくて、社員が現地に行って、メンテナンス方法を教えるんです。自分たちが日常的に行っている業務が、国を越えて海外の人たちに伝わっていくって、素晴らしいなぁと思うんです。

車両のモデルチェンジなどのタイミングもあるので、いつになるかはわかりませんが、いつか自分も埼京線の点検方法を伝えに、海外に行ってみたいと思っています。