トーフラーメン考案者がこだわる“優しい味”

 

中学を卒業後、銀座をはじめとする各地の中華料理店で修行を積んだ髙木利三さん。1970年には中華の腕を買われ、岩槻の「レストラン大手門」で働くことに。賄いのラーメンを作るなかで、行き着いたのが”豆腐を使ったラーメン”だった。

「少しラー油が入っていますが、麻婆豆腐ともちょっと違う。どんな人にも合う、優しい味付けなんですよ」

さすがグルメ王。店内にはサイン色紙がびっしり。常連さんが持ってきてくれるというご当地ぬいぐるみも増加中。

スタッフ間で評判となった賄いは、瞬く間に店のメインメニューに昇格。その後、髙木さんは独立して与野や川越に出店し、2002年に「トーフラーメン 幸楊」を開店した。

転機は2008年。「埼玉B級ご当地グルメ王決定戦」に、「トーフラーメン 幸楊」と、かつて賄いを作った「レストラン大手門」がトーフラーメンを掲げて出場し、見事優勝したのだ。トーフラーメンは知名度をぐんとあげ、考案者の髙木さんにもスポットが当たった。

「昔の同僚や、うちで働いてた若いのも、今トーフラーメンを店で出しています。それぞれアレンジをしていて味は違いますけどね」

豆腐がふんだんに入った餡は、ウェーブがかった麺によくからむ。トッピングのうずらとネギが程よいアクセントだ。

いわゆる麻婆麺を想像してひと口食べると、その優しい舌触りに裏切られる。「トーフラーメン」(650円)

「がっつり食べたい学生さんなんかは、半ライス(50円)を頼んでどんぶりにしてますね」。

ランチタイムを過ぎても、学生や夫婦、男性客といった常連客が訪れる。幸楊の暖簾をくぐれば、髙木さんの“優しい味”が待っている。

トーフラーメンの生みの親、髙木利三さん。娘さんとふたりでお店を切り盛り。