夕方から終電後まで。戸田飲みの一軒めはここから始まる

 

戸田駅の東改札を出るとすぐに目に入る大きな倉庫風の建物。かつては実際に倉庫として使用されていた物件を改装したという立ち飲み屋で、串揚げは100円、ドリンクは200円からという超良心価格の札が並ぶ。

戸田駅東口を降りればすぐそこ。提灯の明かりに思わず喉が鳴る。

フードは100〜400円代が中心という、驚きの価格設定。ちょっと一杯にはうってつけだ。

名は見た目そのままに「第3倉庫」。開店時はボートレース帰りの親父さんたち、深夜には戸田住まいのサラリーマンらで賑わう、庶民のための居酒屋だ。会計はキャッシュオンのため、ついつい飲み過ぎるなんてことも少ない。

店長の児玉智紀さんが戸田の地を踏んだのは20歳のときのこと。名古屋の高校を卒業し、「とにかく東京に出てみたい!」という初期衝動を胸に仲間と上京。しかしそこは向こう見ずの青年たち。手持ちの資金が足りず「これでは東京には住めない」と不動産屋に一蹴されてしまう。そこをなんとか……と粘りに粘った結果、それならここはと紹介されたのがこの戸田だった。夢に見た東京ではないものの、池袋や新宿、渋谷までのアクセスに強く、家賃も都内と比べ劇的に安い。即決だった。

倉庫の雰囲気を活かすため、余計な内装は施していない。訪れた際は是非ドラム缶で。

緑に恵まれた戸田の温和な空気と肌が合い、気がつけば住み始めて15年。一児の父になった児玉さんにとって、戸田はファミリーに優しい街だという。

「大小さまざまな公園があって、人が穏やかで、のんびりした空気があって。それに、昔と比べると駅前にも少しずつの居酒屋のような人が交流する場所ができて若い人が増えたので、活気が出てきましたね。個人的にはもっとそういう場所が増えてほしいなぁ」。

照れながらも確かな戸田愛を語る児玉さんのほころんだ顔には、この地への愛着が滲んでいた。