受け継がれる母の味

 

ハンバーグを前にすると、いつも頭をよぎる味がある。少し焦げ目のついた肉に、デミグラスソースが香ばしく絡む、素朴で優しい味。「レストハウスおけさ」の味はまさにそれだった。

戸田公園駅から徒歩5分ほど。看板に大きく「ホッピー」と書いてあるのが目印。

店内。朝から晩まで、夫婦ふたりで店を切り盛りしている。

ハンバーグ定食(790円)。サービスのうまい棒はどの定食にも付く。

店主の遠藤正則さんは「家庭の味、母親の味です」と笑った。 創業は今から50年ほど前。母親がつくる家庭料理が中心の店だった。当時このあたりには大規模な工場が多く建ち並び、昼も夜も活気づいていた。駅ができた1980年代には店に行列ができるほどだったという。

店内には所狭しとメニューが。冬場はひとり鍋もできる。

教員を目指していた遠藤さんは、店舗の拡張を機に店を継ぐことに。覚悟を決め、見よう見まねで料理を覚えた。母親の料理を軸にしつつ和洋中へバリエーションを広げ、かつては壁一面すべてがメニューで埋め尽くされるほどだったという。

遠藤さんは大学時代、東海大で柔道の指導にあたっていた。山下泰裕選手にも手ほどきをしたという。

「難しいことは何もしていないんです。自分が美味しいと思うものを、ていねいに作るだけですから」

大学まで柔道一筋だったという遠藤さん。その大きな手で、繊細で優しい母親の味を作り続けている。