受け継がれる母の味
ハンバーグを前にすると、いつも頭をよぎる味がある。少し焦げ目のついた肉に、デミグラスソースが香ばしく絡む、素朴で優しい味。「レストハウスおけさ」の味はまさにそれだった。
店主の遠藤正則さんは「家庭の味、母親の味です」と笑った。 創業は今から50年ほど前。母親がつくる家庭料理が中心の店だった。当時このあたりには大規模な工場が多く建ち並び、昼も夜も活気づいていた。駅ができた1980年代には店に行列ができるほどだったという。
教員を目指していた遠藤さんは、店舗の拡張を機に店を継ぐことに。覚悟を決め、見よう見まねで料理を覚えた。母親の料理を軸にしつつ和洋中へバリエーションを広げ、かつては壁一面すべてがメニューで埋め尽くされるほどだったという。
「難しいことは何もしていないんです。自分が美味しいと思うものを、ていねいに作るだけですから」
大学まで柔道一筋だったという遠藤さん。その大きな手で、繊細で優しい母親の味を作り続けている。