あくまで「美味しい食」としてのマクロビを

 

店内はシンプルに注文カウンターと商品の棚だけ。そのかわり、奥には広々とした厨房が。

「ゴハン屋フタバ」を説明するなら、マクロビオティック(※)のお店と言うより、シンプルに“街のお弁当屋さん”が良いだろう。メニューは日替わりのお弁当と、注文してから握るおにぎり、そしておかず。店主の坂井知子さんと江口恵美子さんは、もとは「ママ友」だった。近所の公園で子どもを遊ばせるなかで出会い、お互い北欧が好きで意気投合した。

※マクロビオティック…玄米、全粒粉、豆類、野菜、海藻などを中心に構成する食事法。自然や身体にとって優しい食事をとることを基本とする。

「いつか自分たちでカフェをやりたいね、なんて夢みたいに話してたんです」

日替わり弁当(700円)。この日は人参のお豆腐ナゲット、のり塩ポテト、酢の物、キャベツのレモンサラダ、玄米。

育児の合間を縫ってカフェ巡りに精を出すうち、何気なく入った店でマクロビ食に出会った。

「こんなに美味しいなんて」それまで抱いていたイメージががらりと変わり、自分たちも作りたいと教室へ通った。友だちに向けてマクロビ弁当を作るようになると口コミで依頼が増え、パートの傍らケータリングを始めるようになった。夢を口にしてから8年ほど。いよいよ物件探しを始めると、大通り沿いに見つかった。路地裏の静かなカフェを思い描いていたふたりは悩んだが、思い切って業態を替え、弁当屋を立ち上げることにした。

「だって私たち、これまでもお弁当を作ってきたよねって。まずはそこから初めてみようと思ったんです」

綺麗に整えられたガスコンロで、テキパキと揚げ物をつくる江口さん。

自家製シロップを使ったジンジャーエール(400円)は優しい甘み。ベジミートの唐揚げ(170円)は、原材料が大豆とは思えないほどジューシー。

坂井さんが仕込んでいるのは、パイナップルの特製酵素シロップ。数日寝かせてソーダで割り、ドリンクとして販売する。季節ごとにレモンや梨、ぶどうも登場。

2013年、ケータリングの屋号でもあった「フタバ」を掲げて、念願の店がオープンした。美味しいマクロビを心がけるフタバの弁当は、男性にも女性にも、そして子どもたちにも親しまれている。コツコツと続けて、足掛け13年。公園で遊ばせていた子どもも今ではもう高校生だ。

「やりたいことはたくさんあります。マクロビってこんなに美味しいんだ、難しいことじゃないんだ、と思ってもらえたら嬉しいです」